近年、微生物をはじめ、高等動植物に種々のD-アミノ酸が結合態や遊離の状態で存在することが示され、それらの詳細な分布や生理作用に関する研究が始められている。申請者も食用水産動物筋肉中の遊離D-アミノ酸の分布を調べ、D-アラニンが無脊椎動物の特定の動物群に蓄積されることを示した。本研究では、D-アラニンの由来と蓄積機構を解明する目的でまず始めに、D-およびL-アラニンの簡便な分析法を検討した後、環境水の塩分濃度の変化により、それらの量的変化を調べることとした。 1.L-およびD-アラニンのHPLCを用いる分析では、ポストラベル法がより正確に定量できると考えられるので、OPA法を始めとする種々の方法を検討したが、いずれも簡便さに難があり、改良の余地があった。プレラベル法のマ-フィー法も検討したところ、概ね良好な結果を得た。 2.海産種のハマグリを人口海水(16℃)で馴致した後、徐々に塩分濃度を上げ、1週間後に150%海水になるまで飼育した。経時的に5個体ずつ採取し、組織別にD-およびL-アラニンを分析した。100%海水ではD-アラニンは平殻筋29.4μmol/g(組織100g中に含まれるμmol、以下同様)、 鰓7.3μmol/g、中腸腺3.0μmol/gであったが、150%海水ではそれぞれ45.6μmol/g、15.1μmol/g、13.1μmol/gに増加した。一方、L-アラニンも同様の変化が認められた。D/D+Lは平殻筋では0.54から0.48に減少したが、鰓では0.34から0.45に、中腸腺では0.24から0.31に上昇した。
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