研究概要 |
本研究は,ワムシ摂餌期,すなわち全長15mmサイズまでの仔魚期におけるビタミンE(VE)の必要性を明らかにすることを目的に,マダラおよびブリ仔魚を用いて、酢酸型と遊離型などVEの形態の違いによるワムシおよび魚体への取り込みの相違や両魚種におけるVE要求量を明らかにしようとするものである。 まず,種々の濃度のドコサヘキサエン酸(DHA)で強化したワムシをマダラ仔魚に与え,成長,生残率および水腫魚などの出現率に及ぼす影響を調べた。その結果,全長4〜10mmにおける異常魚の出現率は,ワムシ中の脂質の質に大きく関わっており,特にワムシ中のDHA含量は1%前後が望ましいことがわかった。しかし,魚体中にビタミンE(VE)を含有していた区では,DHAが2%含まれていたワムシを与えても優れた成績を示したことから,DHAの利用にVEが関与していることが明らかになった。そこで次に,ブリ孵化仔魚の成長および生残率に及ぼすDHAとVEの影響を調べるため,ワムシの栄養強化にDHA強化ユ-グレナを用い,タイプおよび濃度の異なるVEを取り込ませ,このワムシを用いて孵化仔魚に対する遊離型とエステル型のVEの効果の違いを検討した。その結果,生残率は遊離型VEを取り込ませたユ-グレナ強化区が生残率,成長ともに優れ,対照区のクロレラ区は成長,生残率,活力(干出試験)ともに劣る結果を得た。飼育終了時の魚体中にはいずれの区においてもVEは検出されず,今後適正なVEの量とタイプについて検討する必要性のあることが示唆された。
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