研究概要 |
本研究は、ワムシおよびアルテミア摂餌期、すなわち全長15mmサイズまでの仔稚魚期におけるビタミンE(VE)の必要性を明らかにすることを目的に、ブリおよびマダラ仔稚魚を用いて、酢酸型と遊離型などVEの形態の違いによるワムシおよび魚体への取り込みの相違や両魚種のVE要求性について明らかにしようとしたものである。まず、遊離型と酢酸型のVEを用いてワムシへの取り込みを調べたところ、それぞれ以下の回帰式が得られた。 遊離型VE:y_1=0.001x_1^2-0.026x_1+0.435(r^2=0.996) y_1:ワムシに取り込まれたVE含量(mg),x_1:各水槽への遊離型VE添加量(mg) 酢酸型VE:y_2=0.077x_2+0.078(r^2=0.996) y_2:ワムシに取り込まれたVE含量(mg),x_2:各水槽への遊離型VE添加量(mg) これらの結果から、強化水槽10lに対してVE添加量が100mg程度までは、遊離型VEおよび酢酸型VEともにほぼ同様の割合で取り込まれるが、添加量がそれ以上になると、遊離型の方がワムシに取り込まれやすいことが明らかとなった。次に、酢酸型合成、遊離型合成および天然型の各VEを用いてワムシを強化し、それらをブリおよびマダラ仔魚に投餌して飼育試験を行った。その結果、ワムシは酢酸型のVEを体内で遊離型に変えることができずそのまま保持すること、仔稚魚では酢酸型VEを加水分解する能力が劣り、遊離型のものに比較し利用しにくいため、魚体への蓄積が劣ることなどが明らかになった。しかし、ブリおよびマダラの成長や生残率については形態の違いによる差はほとんどなく、ワムシ中に含まれるDHA含量に左右された。なお、ユ-グレナを用いて同様の実験を行ったが、ユ-グレナに含まれるVEは魚体へ反映されないことから、その利用性は低いものと推察された。
|