研究概要 |
無機質が栄養素として我々の体内に、より多く吸収されるには、水溶性であることが必要条件であるが、食品を調理加工することによりどのように無機質が変化するかはあまり調べられていない。本年度の研究では、無機質が食事として体内に取り込まれる以前の化学形態を試験管内実験で検索するために、水産食品中で無機質含量の高い貝類を試料とし、これらに加熱処理を行い、まず、無機質、および無機質と結合していると思われる糖とタンパク質の溶出量を調べ、次に化学形態の検索の第一段階として、加熱処理によって溶出した無機質の分子量分布の概要を調べることとした。試料としてホタテ、アサリ、ハマグリ、カキを用い、湿式灰化を行い、これらの無機質含量を測定した。粉砕した試料に水あるいは食塩水を加え20分間加熱し、溶出した無機質、糖とタンパク質を測定した。また、加熱処理した試料溶液を限外濾過し、分子量10,000以下、10,000〜200,000、200,000以上の3区分に分けて無機質の分布を調べた。その結果マグネシウムを除いて、無機質含量は貝類によってかなり異なり、特にカキの亜鉛含量とハマグリのカルシウム含量がかなり高かった。全般的に加熱処理によって、ほとんどの試料において無機質は有意に変化し、鉄と亜鉛は減少、マグネシウムは増加した試料もあった。タンパク質は加熱処理によって有意に減少した試料もみられたが、糖は加熱による影響を受けなかった。しかし、試料中の溶出量と溶出率は比例せず、加熱処理によるカキの亜鉛、ハマグリのカルシウムは溶出量が最も高かったが、溶出率は最低であった。加熱による無機質を含む成分の分子量変化は見られず、マグネシウムはどの試料では10,000以下の低分子区分に多くあり、亜鉛はカキでは10,000以下に多かったが、その他の試料では200,000以上の区分に存在していた。
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