研究概要 |
鮮魚及びその加工品中に蓄積されるヒスタミン(Hm)はHm生成菌のみならず、Hm分解菌によっても大きく影響されるが、従来、Hm分解菌の役割についてはほとんど注目されることがなかった。そこで本研究では各種の水産物中におけるHm分解菌の分布と役割を明らかにすることとし、本年度はまず、鮮魚の貯蔵中、魚醤油もろみ及びクサヤ汁におけるHm生成菌及び分解菌の消長と種類について調べた。 実験方法は以下の通りである。Hm及びポリアミン量はHPLCにより、Hm生成菌数及びHm分解菌数はそれぞれ当研究室で独自に開発した液体培地法により測定した。また、Hm分解菌数測定に用いた各培地より分離した細菌について、属レベルでの同定を行い、必要に応じて種まで同定した。 得られた主な結果は以下の通りである。(1)通年2カ月毎に入手した新鮮なマサバを5℃および30℃で貯蔵し、その際のHm量、Hm生成菌・分解菌数の消長を調べた結果、貯蔵中期以降にみられたHm量の減少は、いずれの温度とも魚肉中で優占したPseudomonas putidaによっていることが明らかとなった。(2)魚醤油もろみにおけるHm量、Hm生成菌・分解菌の分布とその性状について同様に調べた。その結果、魚醤油中にはHm生成菌は存在するが、分解菌はほとんど確認されず、Hmが30〜70mg/100ml検出された。魚醤油中より分離されたHm生成菌はいずれもPediococcus halophilusに該当し,いままでに報告例のない新しい種のHm生成菌であった。(3)クサヤ汁にはHmはほとんど検出されず、またHm生成菌はほとんど確認されず、分解菌が10^5〜10^6存在した。Hm分解菌としてEnterobacteriaceae、Moraxella,Alcaligenesが検出された。以上のことから、水産食品中には、Hm生成菌のみならず分解菌も広く分布することが明らかとなった。
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