研究概要 |
ヒスタミンはアレルギー様食中毒の原因物質として重要である。本研究では食品中のヒスタミン(Hm)蓄積におけるHm分解菌の重要性について注目し、前年度は魚肉貯蔵中におけるHm量とHm生成菌・分解菌の関係、およびHm分解菌の種類について検討し、貯蔵中のHm消長にはHm分解菌の影響が大きいことを明らかにした。本年度は、さらに数種の水産発酵食品におけるHm蓄積の機構をHm分解菌との関係から調べ、次のような結果を得た。 くさや汁では、Hm生成菌がほとんど検出されず、逆にHm分解菌が10^4-10^6/ml程度存在し、さらにpHがHm分解活性至適域であったことから、Hmが蓄積されにくい環境であると考えられた。逆に、魚醤油ではHmが高濃度検出され、Hm分解菌はほとんど確認されず、食塩濃度10%以上の環境でも増殖する好塩性Hm生成菌の生存が確認された。イカ塩辛については、Hm分解菌およびHm生成菌が熟成期間中ほとんど確認されず、Hmもほとんど蓄積されないことから、本食品におけるアレルギー様食中毒発生の可能性は低いことがわかった。これら水産加工食品中のHm分解菌として、Corynebacterium-Arthrobacter、Moraxella,Acinetobacter、Pseudomonas III/IV、Staphylococcus、MicrococcusおよびEnterobacteriaceaeが分離された。
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