1.地まき式ホタテガイ漁業は、従来の採捕のみの漁業から資源を増加、ないし維持を図りながら経営の再生産を図ろうとする漁業でる。すなわち、稚貝段階から成貝段階まで共同した人間の管理下に置くという新しい漁業形態である。従って、管理及経営形態も従来にない新しいものである。 2.本研究では、ホタテガイ漁業にみられるこうした新しい管理および経営形態について、その経営形態の意義と経営学的にみたその妥当性について検討することによって、この種の経営の継続条件を明らかにすることを課題とした。具体的には、(1)ホタテガイ漁業の管理・経営組織の成立と検討、(2)管理・経営組織の運営方式と構成員間の利害調整過程の分析、(3)経営成果の配分の内部化のメカニズムの検討、(4)地域内、地域間、各漁業間における漁場利用関係の調整と制度的問題点の指摘、を行った。15EA03:3.それによれば、当該漁業の成立した時期は、1970年代初頭から半ばにかけて始まったこと、また経営形態としては、共同経営体 (法人格を持たない任意団体) により経営されていることである。これらが成立した背景・要因は、天然資源の豊凶に左右されて経営的に困窮していた時代であったこと、また増養殖技術の発展期と合致したこと、構成する経営体の多くは経営間格差が小さく均質であったことなどにより共同化の合意形成がなされうる基盤があったと理解された。成立後の共同経営体は構成員の利益配分機構として機能しているにいすぎず、自立的な経営体として成長・転化していない。そのため、企業体としての内部留保などがないため、損失の発生といったリスク処理の機能を持っていない。今後この組織が経営体として自立性をいかに高めて行くのか、今後引き続き検討を加えなければならない課題である。
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