研究概要 |
農村の特徴の一つに生産と生活の隣接を代表する施設として公共牧場を取り上げ,国,都道府県,市町村,地元等の間での整備・管理のための費用負担区分に関するデータを収集した。施設整備においては国や都道府県等の補助があるものの,管理においては,育成目的での利用者と運営主体が主たる費用負担者となっている。しかし一方では,公共牧場はレクリェーション面でも利用されている。このレクリェーション目的での利用は育成等を目的として牧場を利用している農家が主として居住する範囲つまり「地元」の居住者のみならず他の都道府県からの来訪者によってもなされている。公共牧場の生活関連利用は全国的には「公共牧場機能強化事業(ふれあい牧場整備事業)」として事業化されていることが多いが,この事業によって整備された公共牧場においても,必ずしも育成目的で公共牧場を利用している地元農家が生活関連で利用しているとは限らず,利用者は地元農家,地元非農家,地元外の住民と幅広い。 農村生活環境の評価手法として直接質問法や効用関数法,トラベルコスト法,ヘドニック法といった代表的な便益評価手法に関して整理・検討を行った結果,非農村住民つまり地元外の住民による公共牧場の利用は一部に宿泊が見られるものの通過型が多いことから,直接質問法とトラベルコスト法の2つの方法を用いることが妥当との結論を得た。 また,北海道・近畿における公共牧場の多面的な利用を取り上げ,その整備と管理にかかる費用の試算比較に必要な経済的・技術的情報を収集した。しかし,現時点では,地元利用・非農村住民利用による利用形態や便益の詳細が不明であり,この点,利用主体別の利用状況の詳細把握には来年度のアンケート調査が必要である。
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