研究概要 |
農村の特徴の一つである生産と生活の隣接を代表する施設として公共牧場を取り上げ,公共牧場来訪者に対するアンケート調査を実施し,このアンケート調査の結果から公共牧場の経済価値を算出した。 農村生活環境の評価手法としては,直接質問法(CVM)や効用関数法,トラベルコスト法,ヘドニック法などが代表的な便益評価手法であるが,本研究では,非農村住民つまり地元外の住民による公共牧場の利用は一部に宿泊が見られるものの通過型が多いことから,農村生活環境の評価手法として直接質問法とトラベルコスト法の2つの方法を評価手法として採用することが妥当であると結論づけた。 そして、北海道と近畿にある2つの公共牧場の来訪者を対象にアンケート調査を夏季と秋季に実施し利用主体別に現住所,旅行経路,仮の入場料金設定による公共牧場の評価等を把握し,この調査結果を使って公共牧場の経済評価を行った。いずれの公共牧場においても,近隣市町村からの来訪者の場合,公共牧場が主目的地であることが多いものの,遠隔地からの来訪者の場合,公共牧場は目的地の一つにすぎないことが多く,来訪者のトラベルコストを考える場合,目的地が複数であることを考慮した分析が必要であることがわかり,この点を考慮した分析を行った。直接質問法とトラベルコスト法による分析の結果,公共牧場を利用者は経済的にみても評価しているとともに経済評価には季節差と地域差が存在することがわかった。よって,公共牧場の場合,その整備と管理において必要となる費用は公共牧場利用者である近隣在住者と遠隔地在住者が直接的・間接的に負担することは十分に意味があるといえる。
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