研究概要 |
本研究では、農村生活環境の中でも、園地的性質を持ち、観光等を目的とした利用者が広範囲な地域から訪れているふれあい機能をもった公共牧場を評価・検討の対象とした。実際の分析対象となったのは京都府碇高原総合牧場(京都府)と帯広市八千代公共育成牧場(北海道・帯広市)である。これらの公共牧場を観光等の目的で来訪した人を対象に牧場の評価や旅行費用等に関するアンケート調査を実施し、この調査結果を基にして農村生活環境の整備と管理における費用負担方式を検討した。 来訪者による牧場評価を分析するに当たっては、トラベル・コスト法を採用し、アンケートによって選られたデータから各公共牧場の消費者余剰を計測した。碇高原総合牧場においては、個人トラベル・コスト法(ITCM)を、八千代公共育成牧場では多目的地を考慮したゾーン・トラベル・コスト法(ZTCM)を用いて計測した。その結果、碇高原総合牧場の消費者余剰は牧場来訪1回当たり39,338円、年間8.8億円となった。八千代公共育成牧場の場合、来訪者一人当たり5,610円、少なく見積もって年間1.1億円の消費者余剰となった。この消費者余剰の違いには分析手法も原因していると思われる。 このように、いずれの公共牧場においても、総額において1億円を超える消費者余剰があり、公共牧場管理費用の一部を牧場来訪者に求めることは可能であると考えられる。しかし、今回の分析からは公共牧場への入場を有料化することが総合的にみて有効であるとの結論までは出なかった。今回の分析から、農村生活環境の整備と管理における費用負担方式の決定においては利用者等による当該施設・事業の多面的な機能を継続的に経済評価するシステムを用意する必要があるとの結論を得た。
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