これまで「農産物」の輸入問題を多部門線型一般均衡モデル及び非線型多部門一般均衡モデルを用いて分析してきたが、一連の研究の流れはモデルの体系で決まる経済条件をモデルの中で決定するという経済変数の内生化の過程であった。本研究では国際間産業連関表を用いて貿易相手国をモデルの中に取り組み外生的に決めてきた「農産物」の貿易量を内生化すること、さらには中間投入財の貿易も内生化する開放体系化の一般均衡モデルを構築することを目的としている。本年度はその準備として次の3点を目標とした:第1は中間財を含む貿易理論についての既存の研究を展開すること、第2は基礎データとなる国際間産業関連表を延長推計すること、そして第3は小規模のパイロットモデルを作成することである。 第1の点については、概ね既存理論のサーベイは終了した。なお、作業段階で本研究テーマと直接的には関係しないが、貿易理論で頻繁に用いられている生産可能性フロンティアを幾何学的に導出する手法を開発した。この手法は、規模に関して収穫逓増(或いは逓減)する生産技術をも考慮できるという意味で、従来用いられてきたサポスニックの手法を拡張したものとなっており(現在、Review of International Economicsへ投稿中)、本研究を理論的にバックアップする際に有用となる。 第2の点については、国際間産業連関表を延長推計する際に必要なデータはほぼ収集したが、時間の制約もあり延長推計を完成させるには至っていない。この点に関しては次年度に行う予定である。なお、1985年秋以降急速な円高が進行したたために延長推計のベースとなる産業連関表(1985年)を用いたのでは目標年次(1990年)の経済構造が把握できない可能性があるという問題が、応用一般均衡分析を行っている研究者との意見交換の際に指摘された。この問題点に関しても次年度以降解決を図る予定である。 第3の点に関しては、中間投入財に関して輸入財と国内生産財の代替関係を如何にして特定化していくかという問題点が指摘されたが、分析の作業上中間財投入係数を一定とし、輸入中間財と国内中間財の代替のみを許す(但し、代替の弾力性が1となるコブ・ダグラス型集計関数を援用した)という仮定を採用した。
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