これまで「農産物」の輸入政策の変化が農業及び関連産業を含む国内産業構造へ及ぼす経済波及効果を多部門線型一般均衡モデル及び非線型多部門一般均衡モデルを用いて分析してきたが、一連の研究の流れはモデルの体系外で決定される経済条件(外生変数)の内生化の過程であった。 本年度は、応用一般均衡モデルの研究者との討議・意見交換を通して決定したモデルの構造に基づき「農産物輸入」が国内産業構造へ及ぼす経済波及効果に関するシミュレーション分析を行った。具体的には、ガット農業合意に基づく我が国の農産物輸入政策の変化を前提にし、当該政策の変化が農産物市場、生産要素市場へ及ぼす経済波及効果に関する経済評価を行った。特に、農産物市場への波及効果に関しては、従来の線型一般均衡モデルでは評価することの出来ない生産要素市場を媒介とした間接波及効果の評価を行った点が特記すべき貢献であると考える。また、農業就業構造の高齢化が産業構造へ及ぼす影響については、ガット農業合意に起因する我が国の産業構造調整問題の立場からではあるが、単に農業内部に留まらず非農業部門にとっても影響を及ぼしうることを含意とする学会報告(第2回アジア農業経済学会、1996年8月、於インドネシア・バリ島)を行った。 当初の予定では、国際間産業連関表を用いた国際貿易モデルの枠組みで我が国の農産物貿易量を「内生化」する事になっていたが、時間的制約のため研究期間内に作業が完了していない点を付け加えておく。なお、現在進行中の作業から得られる成果については、今後科学研究費補助金の研究成果として順次発表していく予定である。
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