これまで「農産物」の輸入政策の変化が農業及び関連産業を含む国内産業構造へ及ぼす経済波及効果を多部門線型一般均衡モデル及ぶ非線型多部門一般均衡モデルを用いて分析してきたが、一連の研究の流れはモデルの体系外で決定される経済条件(外生変数)の内生化の過程であった。本研究の当初の目的は、多国間の貿易政策モデルを応用一般均衡分析のフレームワークで構築し貿易量を内生化した上で、今後の我が国が採るべき農業政策のシミュレーション分析を行うことであった。この点を踏まえ、モデルの構造の特定化及び必要とされるデータセット(基準データ・経済構造パラメーター)の推計という一連の作業を進めてきたが、種々の制約のため現時点では当初の目的を100パーセント達成したとは言い難い。そこで、今回の報告では一連の作業で構築された日本経済に関するサブモデルを用いて、当初の目的を達成すべくシミュレーションを行い、構造調整問題については分析結果のインプリケーションという形で言及するにとどめた。なお、シミュレーションはガット農業合意に基づく我が国の農産物輸入政策の変化を前提にした上で、当該政策の変化が農産物市場、生産要素市場へ及ぼす経済波及効果を評価するという方法で行われた。シミュレーションによる評価では、生産物市場での経済波及効果だけではなく従来の線型一般均衡モデルでは評価することの出来なかった生産要素市場を媒介とした「間接」波及効果をも含めた総合効果の経済評価を行った点が特記すべき貢献であると考える。シミュレーション結果の詳細については、研究成果報告書を参照されたい。なお、今回報告できなかった部分に関しては、今後順次発表していく予定である。
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