東京都、大阪市、京都市、名古屋市などのわが国の代表的な青果物の中央卸売市場で聞き取り調査を実施し、市場流通の概況と問題点について検討した。近年、量販店の発展とともに、青果物の中央卸売卸売市場の卸売業者及び中卸業者の機能が変化しつつある。すなわち、卸売業者は手数料商人としてセリ取引をもっぱらとしていたが、セリ以外の取引を増やしつつある。卸売市場は、セリ取引が原則であるが、最近は先取販売や予約取引・予約相対取引などセリ以外の取引が増加している。また、仲卸業者は分荷機能をもっぱらとし小売業者に販売していたが、量販店との取引を増やし仕入・品揃機能に重点が置かれるようになった。 この卸売業者及び仲卸業者の機能の変化は、卸売市場によても相違がある。東京都や名古屋市の中央卸売市場では、卸売業者は仲卸業者との取引のほかに、売買参加者である小売業者との取引も行っているが、大阪市や名古屋市の中央卸売市場では、卸売業者は仲卸業者だけと取引している。前者では、仲卸業者は小売業者と競争しながらセリに参加し、独自の機能を発揮しなければならないので、かえって先取物売買や予約相対取引などセリ取引からの離反が著しいしのに対し、後者では仲卸業者同士が牽制しあい、セリ取引を堅持する傾向がみられる。このように、市場の組織によって、卸売業者や小売業者の機能にも微妙な差違があることが分かった。 仲卸業者の機能は、取扱金額の大小によっても差違がみられる。概して大規模な仲卸業者は量販店への販売が多く、小規模な仲卸業者は一般の青果物小売店への販売が多い。しかし、小規模な仲卸業者の中にも量販店への販売に特化している業者もみられた。卸売過程での流通経費も割合は小さく、労働費の割合が大きいので、販売量を増やすために、様々な工夫がなされており、量販店対応も不可避となっていることが分かった。
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