研究課題/領域番号 |
06660280
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
大原 興太郎 三重大学, 生物資源学部, 教授 (70024586)
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研究分担者 |
秋津 元輝 京都大学, 農学部, 講師 (00202531)
乗本 秀樹 三重大学, 教育学部, 助教授 (20144222)
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キーワード | 生物資源 / 多面的機能 / 肥料資源 / 副産物利用 / 持続性 |
研究概要 |
本年度はとくに生物資源の中で作物や家畜の成長エネルギー源である肥料と飼料の利用システムについて、その歴史的変遷をたどると共に、農林漁業生産あるいはそれら生産物の加工に伴って生ずる副産物の利用管理に焦点をあてて研究を進めた。 肥料資源は長い間、一部の商品作物を除いて山の刈草、草木灰、野菜屑、生活残渣、人糞尿などの有機性自給肥料に基づいていた。明治に入って鉱物性の無機質肥料(過燐酸石灰など)の生産がはじまり、さらに大正13年合成硫安が工場生産されて以来、化学窒素肥料の生産・消費が急速に増大してきた。これは太平洋戦争で一時低下するものの、戦後も上昇を続け、1960年代にそのピークを迎え、その後は肥料の過剰投入による河川の富栄養化などもあって減少傾向に転ずる。しかし、肥料の主力は化成肥料となり、手間のかかる自給肥料は急速に減少した。畜産の多頭化などもあり、このことが糞尿公害といわれるものを生み出してきた。農業近代化に伴って生物由来の資源の利用が石油化学製品に取って代わられ、伝統的な農業における物質循環が崩壊してきたのである。農産加工業の企業化によって加工産業においても従来利用されていた副産物が利用されなくなり、「廃棄物」として捨てられる事態が増加してきた。 しかしながら、生物由来の副産物とくに大規模化した食品加工業から出る副産物はそれを利用する規模と技術をもつ農業経営体があれば有効に利用し得るのである。そこで現代においても、放っておけば「廃棄物」となってしまう副産物をうまく有効利用しているY農事組合法人の事例を研究して、いわゆる有機性「廃棄物」を副産物として利用し得る条件を探った。結果として、かなり規模の大きなすなわち日産10〜50トンにわたる副産物を処理し、利用し得る農業規模と技術をもっていることが不可欠の条件であることが明らかとなった。
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