本年度は、昨年に引き続き、農地改革期の農村構造を総合的に明らかにするため、すなわち技術・経済・政策・運動・生活などの諸側面を含む農村構造の全体像を明らかにするために、関連する基礎資料の収集整理を進めるとともに、分析を深めるため、世界史的観点からの検討を進めた。 すなわち、資料収集に関しては、農水省農業総合研究所や群馬県、長野県、その他近畿近辺の諸府県の資料の採訪を行なった。 また、その整理・分析を進めるにあたっては、農村の担い手の眼から観るという基本的観点を貫きつつ、世界史的観点からも事実のもつ意義の再検討を進めた。農村の担い手の眼から観るということは、農地改革期において直接農業生産を担っていた農業従事者(とくに小作農経営)の立場から収集した資料の意義を検討することで、従来は土地所有者すなわち地主の立場からの農地改革の意義の検討が中心であったのを大きく変更するものである。世界史的観点からの再検討というのは、農地改革は第二次世界大戦後の国際的関連のなかで外国からの政治的圧力に規定されて進んだのであり、それらの国際的関連の解明が国内の農地改革の進行の研究にとっても必要であるからである。これまでの農地改革研究が一国単位の研究成果を単に比較して特徴を認識する比較史研究であったのを、世界史的に同時進行している国際的関連を明らかにし、農地改革の世界史的構造を明らかにしようとするものである。そのため、韓国・中国・インド・ドイツについて分析を進めている研究者の協力もえ、研究会を継続的に行なった。 これらの研究成果の中間報告として、農業史研究報告会のシンポジウムにおいて報告(報告テーマ:戦後土地改革の比較史的検討)を行なう。
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