研究初年度である平成6年度は、以下の3点に重点を置いて研究を進めることとした. まず第一は、生産者、農協等の産地側および市場関係者等における価格予測情報に対する需要の性格を調査すること、第二は、農協、大口需要者等における予測過程とその精度、問題点を明らかにすること、第三に、市場データに基づいて、ニューラルネットワーク情報処理を援用した価格予測システムのプロトタイプを作成し、現実のデータとの比較による評価を行うこと、以上の3点であった。 このうち第一の課題に対しては、中国四国地方における単協・農協経済連に対して価格予測情報に対する需要構造を分析し、必要とされる価格予測の精度、予測期間等を明らかにした。また生産者に対しては、鳥取県におけるナガイモ産地である大栄町の農協ナガイモ部会参加農家全戸に対して、価格予測情報に対する調査を行いその結果を分析した。 第二の課題に対しては、太田市場において価格予測に基づく生産物の分荷のシステム構築の事例について調査を行った。ここでは経済連の担当者が経験的かつ「職人」的な判断に基づいて価格を予測し分荷を実施していること、このためシステム的な支援が必要であることを明らかにした。 第三の課題に対しては、鳥取県の特産物であるナガイモを素材として、まず、価格予測の前提となるナガイモの需要構造分析におけるニューラルネットワーク情報処理の適用について検討した。またこれを踏まえて、鳥取県の主要農産物である二十世紀梨、ナガイモ、スイカについて、価格形成に影響を与える要因である出荷量、最高気温等の変化に伴う価格の変化に関するシミュレーション分析を行った。
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