本研究では、次の二点を明らかにすることに重点を置いた。すなわち、第一は、農協及び農家における価格予測情報に対する需要の存在及びその構造を明らかにすることである。第二は、ニューラルネットワーク情報処理理論を用いた価格予測システムの開発について検討することである。 第一の点について、まず農協においては価格予測情報に対する需要は確かに存在しているのであるが、しかしこれを農家に提供することについては必ずしも好ましいこととは考えていない。これは農家が価格予測情報をもとにより価格条件のよい市場に自分で農産物を販売するなど、現行の共販体制に支障が発生することを懸念しているためである。しかし農家における分析では、価格予測情報に対する需要は確かに存在しているのであるが、しかしこれによって農協が危惧するような機会的な行動をとるとする農家はごくわずかであることが明らかになった。また、価格予測情報の誤差の許容範囲については、おおよそ10〜20%以内であることが明らかになった。 第二のニューラルネットワークによる価格予測システムの開発については、まずニューラルネットワーク自体が市場の価格形成構造をどのように把握しているかという点を、ネットワークの内部表現を通して検討すると、ほぼ経済学的妥当性を有するものと判断された。さらにこれを価格予測に適用する際には、幾通りかの方法を試みた。このうち予測期間と学習期間の価格動向が比較的近似している場合は比較的良好な価格予測結果を得たが、これが異なる場合は価格予測誤差が農家や農協の誤差の許容範囲を大きくこえるものであった。これを克服するためには、気温など青果物の価格形成に直接的に影響を与える要因を同定しこれを学習に用いるなど、変数をより多く採用する、また特異な学習パターンは学習に採用しないなどの改良が必要であることが明らかになった。
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