平成7年度科学研究費補助金実績報告書(研究実績報告書) 政策理論研究については、1965年以降の過疎法体系と山村振興法体系、および93年の新農政に対応した特定農山村法体系との比較分析を行い、またEUのLFA政策との基本的相違を明らかにした。これらの研究成果は農林省東北農業試験場、農業研究センター、日蘭学会のシンポジウムでオランダの研究者と共同で発表し、共同執筆論文「EUと日本の条件不利地域政府の比較研究」(日蘭学会会誌第2巻第1号1995年10月)として公刊した。 事例研究では、熊本県阿蘇群地域での消費者、生産者、行政、自然保護団体などが阿蘇山外輪山地域の草原と水源、褐毛和牛の放牧を保全するためのトラスト運動の新しい役割を評価した。また、山村の担い手として林業請負事業体の再編と第三セクターの設立動向を四国の愛知県、高知県を事例として分析し、その全国公募の職員採用方式と公務員並み就業条件の整備の意義を高く評価した。 市町村単独の新規農業参入者に対する助成事業の情報収集を、実態調査とともにパソコン通信によって行い、多数の情報を分析した。今後自治体の助成事業の特色を類型化し、望ましい政策の方向を検討することが課題となった。過疎、高齢化社会の農山村を救援するためには、地域住民や自治体だけでなく都市市民のボランディア活動やトラスト組織などとともに、消費者全体による産直事業などの日常的な経済的結合が不可欠と考えられるので、その現状の実態調査が次の課題となった。
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