EUの政策は、産業政策としての農業振興は平担な優等地で行い、山岳地域などの条件不利地域への政策は地域社会の最低限人口を維持し、自然環境や農村景観を保全するための地域社会政策および環境政策として、非市場経済的なデカップリング政策の一環としてあり、山岳地域に集約的な畜産や施設園芸などを奨励するような農業産業政策がないことである。しかし、現在このような直接所得補償による財政圧迫が問題になっており、農村開発計画による条件不利地域問題の解決方法が課題となっている。日本の場合は、従来から山村における農林業の産業振興政策が基本であり、現在においても農林業・農山村の活性化政策がとられている。その活性化政策の中核に都市市民と農山村住民との交流を目的とするグリーンツーリズム事業が行われ、そのための地域の自然環境や歴史的景観の保全整備が重視されている。また地域資源に付加価値をつけた農産加工品の開発と産直などのあたらしい流通システムなどを進めている。これらの産業政策は一定の成果を実現しているが、人口の過疎化と高齢化の進行をくい止めることにはなっていないことが全国的な状況である。そのためEUを参考にした直接所得補償政策の導入が農業関係者から出されているが、国の政策姿勢は消極的であり、都市部の市民からの意識的運動は未だ一般的になっていない。しかし、市町村の段階ではその抱える現実問題の緊急性もあって、すでに何らかの一定期間の直接所得補償をともなう定住政策をとっているところが多くなっている。また、市民が産直運動や自然保護運動のためのナショナルトラストを創設するなど、都市市民の山村の農林業と自然環境への関与が強まりつつある。同時に地元の観光企業のなかには自然環境の保護、環境教育ガイドなどを経営事業化する動きもでており、ニッチ産業の一分野として注目される。 本研究でそのような直接的所得補償政策の導入とあたらしい市場経済主体の萌芽という二つのことなる手法による不利地域の環境管理主体の育成方策の可能性を明らかにした。
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