本研究の目的は、(1)土壌について、従来の幾何学的相似モデルを採用せず、全く新しい幾何学的非相似モデルを開発すること、(2)この新モデルによって、単粒土の保水性、透水性に関するスケーリング技法を開発すること、(3)この新モデルによって、団粒構造の発達した土壌、及び体積変化の著しい泥炭土のスケーリング技法を開発すること、(4)この新モデルによって、従来経験式でのみ表されてきた突き固め土の間隙比と飽和透水係数の関係を理論的に導くこと、である。 平成6年度は、まず対象土壌の固相特性長、間隙特性長および固相の形状係数をパラメータとする新しい非相似多孔質体モデルを作製した。次に、対象土壌として沖縄の国頭マージと豊浦標準砂を選び、それらの空気侵入値、飽和透水係数をある乾燥密度で測定し、それぞれの固相特性長、間隙特性長を定めた。続いて、乾燥密度を変えて空気侵入値と飽和透水係数を測定し、そのデータに基づいて固相の形状係数(τ値)を推定した。国頭マージのスケーリングでは、τ値0.5が最適であった。標準砂の場合τ値は0.9が最適であった。なお文献にみられる土壌についてモデルを適用したところ、砂ではτ値が0.9、カオリン粘土ではτ値が0.75、川崎粘土のτ値は0.55が最適であった。全ての土壌についてτ値はおよそ0.3から1の間の値をとること、固相が立方体に近いほどτ値は1に近づき、固相が偏平になればなるほどτ値が小さくなることがわかった。そして、これらのτ値を用いた透水係数のスケーリングは従来のKozeny-Carmanの式より非常に優位性が高いことが示された。又、τ値は単粒土に対しても団粒土に対ししても定義することができることを明らかにした。平成7年度は、関東ロームについてもスケーリング理論の適用を試みる計画である。
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