ばらつきや不均一性が著しい土壌の物理性の空間的分布を定量化する従来の手法として、土壌の相似モデルを用いたスケーリング技法が広く用いられている。しかし、土壌が幾何学的相似形を有する場合は極めて限定された場合に限られるので、実在の土壌には相似形モデルが適用できない。本研究は、このような土壌の相似形モデルの境界を打破するものとして、土壌が非相似形のままで成り立つようなスケーリング技法の構築をめざした。本研究の目的は、第1に、土壌について従来の幾何学的相似モデルを採用せず、固相の特性長と間隙の特性長を徐々に定義する全く新しいモデル、すなわち幾何学的非相似モデルを考案する事、第2に、この新モデルによって、まず団粒構造の発達していない砂、シルト、ローム、粘土等の保水性、透水性のスケーリング技法を開発すること、第3に、団粒構造の発達した土壌、及び体積変化の著しい泥炭土についても同様のスケーリングを試みること、第4に、従来経験式でのみ表されてきた突き固め土の間隙化と飽和透水係数の関係に、非相似モデルに基く土壌のスケーリング技法を適用することであった。 本研究によって、土壌のスケーリング技法を従来の相似形土壌モデルから非相似形土壌モデルへと発展させた事は、農業土木学、土壌学、土壌物理学、水文学、土質力学、環境科学などの関連諸科学において共通の困難となっていた、フィールドの持つ不均一性の定量化問題に対して、重要な貢献をしたものである。本研究に対し、世界各国の土壌物理研究者、森林水文土壌研究者などから論文別刷り請求が寄せられている。なお、本研究において目的を達せられなかった、泥炭土のスケーリングおよび突き固め土のスケーリングは経常研究として引き続き完成させたい。
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