これまでに得られた調査および実験結果は以下の通りである。 1.名護市真屋崩壊性地すべりを事例として、すべり面付近の採取試料のピーク強度および残留強度を測定し、土質強度と安全率の相互関係にについて検討した。 (1)名護市真喜屋崩壊性地すべりは、地形的には地すべりの履歴を有する斜面であり、地質的には移動層となる強風化層がシルト-粘土質で、風化、粘土化が進んでいる。下層は緑色岩からなり、地層の走向がN20゚で、東側へ12゚傾斜している。風化層は層厚が4〜5mで土砂状をなし、色調は褐色を呈している。(2)採取不撹乱試料のピーク強度はc_f'=3.0kPa・φ_f'=39.0゚となり、残留強度および完全軟化強度は、それぞれc_r=0kPa・φ_r=17.9゚、c_<sf>=0kPa・φ_<sf>=38.2゚となった。(3)地すべり斜面の安全率F_sについては、すべり前の斜面においてピーク強度を代入したときの安全率がF_s=1.11となり、滑ったという事実と相違する。安全率が1を超えているにもかかわらず、すべりが発生したのは、すべり前の斜面において地質的な弱面が存在し、弱面が潜在すべり面の一部となっていたためであり、すべり前の斜面ではピーク強度だけではなく、弱面の強度である残留強度も関与している。すべり後の斜面においては、残留強度を代入して場合、安全率が0.41となり、停止している現状斜面と矛盾する。これは、すべり後の斜面においても完全に線的なすべり面ができているわけではなく、ピーク強度を発揮するすべり層が残存しており、すべり面の強度には残留強度だけではなくピーク強度も関与していることを示している。 2.土砂流出とその防止については、マルチングによる赤土・濁水流出抑止効果を人工降雨による流出試験で検証している。
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