研究概要 |
昨年度までに,雑草群落の生活値モデルを雑草種子数を状態変数とする力学系として定式化した.本年度には,このモデルを高次元の力学系モデルに拡張し,実際の耕耘作業をモデル化できるようにした.このモデルでは農作業が構成要素として取り込まれており,除草作業・耕耘作業などを記述することができる.雑草の発生,成長,結実から秋耕,越冬,春耕にいたる1年間のプロセスが統一的にモデル化されている.本モデルでは,雑草群落の発芽率・成長速度・繁殖率などの生理・生態学的パラメータと,耕耘による雑草種子移動のパラメータが全く対等に取り扱われている点が特徴である.これによって,包括的な雑草管理の戦略が提示された. さらに,耕耘試験によって種子の移動に関するパラメータを同定した.これらを基に,パラメータスタディを行い,プラウ耕の耕深を毎年同一で作業するのではなく,異なる深さを組み合わせることによって,経年的にほ場の雑草種子数を減少させ得ることを示した.また,ロータリ変換も実験的に決定した. また,昨年度作成した種子生産モデルについても,広範なパラメータスタディを行い,除草時期を最適化することにより,大幅に生産種子数を低減できることを示した. また,密度依存性を考慮した非線形力学系モデルの構築もこころみ,今後の研究発展方向を明示した. 本研究では申請時の研究目的と研究実施計画は達成できた.開発されたモデルの入力パラメータデータベースのさらなる蓄積と,実際の多様な作業体系を想定した広範なパラメータスタディによって,雑草管理を目的とする農作業の最適化設計に使用できる.
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