研究概要 |
薬剤使用の軽減と深層部までの有効な土壌消毒法を明らかにするため,従来の歩行索引型土壌消毒機とトラクタマウント型土壌消毒機(一段注入式)並びに試作した二段注入式深層用土壌消毒機による深層部の線虫防除効果と薬剤の深層濃度分布について比較検討を行った。その結果以下のことが明らかになった。 1.線虫の垂直生態密度分布は有機物,堆肥の施用と深耕によって,深層部までの生息環境が良くなっているため,深層部(25〜50cm)までの線虫生息密度がかなり高まり,深層消毒の必要性が裏付けられた。 2.土壌消毒剤DDの垂直濃度分布は,消毒7日後において,一段注入消毒法,二段注入消毒法ともに深さ50cmまで線虫防除に有効な10ppm以上のガス濃度が検出されたが,表層部0〜10cmにかけて急激な濃度の減少が見られた。一段注入法と二段注入法を比較すると,二段注入法の垂直ガス濃度分布が深層部までやや均一性が見られ,薬剤使用量の軽減が期待された。 3.線虫防除効果は消毒7日後において一段注入法と二段注入法ともに上層部線虫減少率98〜100%,下層部線虫減少率98〜100%を示し,ほとんどの成虫が死滅した。しかし,消毒30日後には上層部:30〜77%,下層部:30〜88%と線虫密度の回復がみられ,圃場によっては消毒前よりも線虫の増加が一部見られた。このことは現在の土壌消毒が幼虫,成虫には効果的であるが,線虫卵への効果は薄いことを示すものであり今後消毒方法の再検討が必要であることが明らかになった。 4.今回の試験では一段注入法と二段注入法の防除効果に明確な差は認められず,消毒後にビニール被覆を30日間行った消毒法と土壌水分の多いクロボク土での二段注入法が長期的な防除効果が認められた。
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