1972年以来、雨水のpHの測定を継続しており、年々酸性化が進行していることを明らかにしてきた。平成6年度においては、自然雨水及び人工酸性雨による植物の花弁、葉の状態変化、障害について基礎的観察を行なってきた。 1.降水のほとんどはアサガオの花弁の脱色反応を引き起こしたが、その程度は硫酸溶液5〜10ppmに相当した。また人工酸性雨による実験ではpH4.5で弱い変色が発現し、pH4.0〜3.5ではっきりした脱色、pH3.0〜2.5では完全に白く脱色した。硫酸と硝酸溶液との間でははっきりした差異は認められなかった。 2.pH2.5〜5.6の硫酸基準液による数種の植物葉の障害を検討したが、数時間の実験では可視的変化は認められなかった。しかし葉の表面における水滴の接触角が、人工酸性液接触後はpHの低いほど小さくなる傾向がみられた。これらの結果は植物種によって差異が大きいこともみられた。 3.今後、自然雨、人工酸性雨によって起こる植物体地上部(葉、花弁)の組織の損傷、生理作用(光合成、蒸散作用など)の変化について、植物種による葉面ワックス量、葉齢の違い、降雨条件の違いによる影響を検討する。 4.また自然状態における雨水の物理化学的性質についても観測と解析を継続して行なう。
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