平成7年度においては、1991〜1995年の5年間の降水について酸性度および電気伝導度の測定・解析とともに、59種の植物の葉を使って、人工酸性雨接触実験を行い、障害の実態を検討した。 1.倉敷の雨水の観測と解析を行なった結果、1991-1995(5年間)の降水のpHはpH3.3〜7.0の範囲にあり、平均値は4.38であった。また、降水の95%がpH5.6以下のいわゆる「酸性雨」であった。雨量とpHの間には特徴的な傾向がみられ、降水量の少ないときにはpH3から7までの広い分布がみられるが、降水量の増加に伴いpH4.5-5.0の値に収れんする傾向がみられた。さらに雨量とEC、PHとECの間には負の相関関係がみられ、一般的には雨水に含まれる汚染物質の濃度により降水の酸性度が決定されることが示唆された。倉敷において一般に観察されるpH4.5-5.0の人工酸性雨の溶液を樹木葉に流下させた場合、pHが高くなり、ECは増大した。このことから樹冠を流下した雨水は葉面に付着した物質や葉内から溶脱してきた物質によって変化することが示唆された。 2.人工酸性雨溶液の5時間接触処理によって、59種の供試植物葉のうちpH2.5で11種、pH2.0で42種、pH1.5で55種の葉に変色がみられ、2/3以上の種が障害を受けるpH値は2.0であった。これらの障害の程度は植物種によって著しく異なっているが、樹木種では他の植物種よりも低いpH値で障害が発現する傾向がみられた。障害の現われやすい葉はサツマイモ、インゲンマメ、サルビアなどであり、障害が現われにくい葉はキャベツ、クスノキ、オオムギ、クズ、ヨモギなどであった。また葉の酸性雨による障害は前年度検討した花弁の障害よりも低いPH値で発現した。
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