昨年度に、アフィティークロマトグラフィーの手法を駆使して調製したオボムチンから、各種糖ペプチドの結合糖鎖のほぼ全体像が解明された。本年度は、これらアフィニティー分画された各種シアリル(硫酸化)糖ペプチドを用いて、種々の生理活性試験を行い発現した生理活性と結合糖鎖およびペプチド部分の構造関連性を考察し、各種糖ペプチドのさらなる化学的・酵素的修飾により、高活性成分の分子設計について検討する予定であった。 本年度は、まず、オボムチン自体がインフルエンザウィルスの赤血球凝集反応を阻害する活性を有することより、結合シアル酸の役割を重要視した。また、昨年度のオボムチン結合糖鎖の詳細な構造研究より、シアル酸の分子種としてN-アセチルノイラミン酸のみを結合する糖鎖群の存在とそれらの化学構造の全貌が明らかとなった。そこで本年は、コレラトキシンの認識・結合するレセプターであるモノシアロガングリオシドGM1の末端2糖構造にオボムチン糖鎖の末端構造が似ていることに注目し、トキシンに対する中和活性を分子構造的に予測した。そこで、始めにコレラトキシンの高感度検出法およびその中和活性測定法を開発する事にした。原理は、ポリスチレンビーズにGM1を結合させ、コレラトキシンをビオチニル化して反応させ、HRP-ストレプトアビジンを反応させて、発色させ、マイクロプレートリーダーで数値化する手法である。 この新手法を用いて、オボムチン由来の糖ペプチドのコレラトキシン中和活性を測定したところ、予想したように高い中和活性を示すことが初めて示され、消化管内での毒素原性大腸菌やコレラ菌の産出するエンドトキシンに対する中和活性が示唆され、これらの対症療法薬としても有望ではないかと考えられた。
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