初年度には、鶏卵オビムチンに結合する各種糖鎖の全貌を明らかにするために、精製オボムチンをアルカリ還元法に供し、結合全糖鎖を切り出した。イオン交換クロマトグラフィーにより中性および酸性糖鎖に分別した。中性糖鎖は、高性能ゲルろ過の繰り返しにより、酸性糖鎖はイオン交換およびアミドシリカによる高速液体クロマトグラフィーにより精製した。各種糖鎖の化学構造を、糖質組成分析、メチル化分析および各磁気共鳴スペクトロメトリー分析により決定した。その結果、中性糖鎖で3種(単糖、2糖、3糖糖鎖)および酸性糖鎖で3種(4糖、5糖および6糖糖鎖)の文献未記載の新糖鎖の存在を初めて明らかにした。さらに、著者らの開発したリゾチームをリガンドとするアフィティークロマトグラフィーの手法を駆使してオボムチンのアクチナーゼE消化物から、中性および酸性糖ペプチド(シアリル糖ペプチドおよびシアリル硫酸化糖ペプチド)を単離精製することに成功した。 本年度は、まず、オボムチン自体がインフルエンザウィルスの赤血球凝集反応を阻害する活性を有することより、結合シアル酸の役割を重要視した。コレラトキシンの認識・結合するレセプターであるモノシアロガングリオシドGM1の末端2糖構造にオボムチン糖鎖の末端構造が似ていることに注目し、トキシンに対する中和活性を分子構造的に予測した。そこで、始めにコレラトキシンの高感度検出法およびその中和活性測定法を開発する事にした。原理は、ポリスチレンビーズにGM1を結合させ、コレクトキシンをビオチニル化して反応させ、HRP-ストレプトアビジンを反応させて、発色させ、マイクロプレートリーダーで数値化する手法である。この新手法を用いて、オボムチン由来の糖ペプチドのコレラトキシン中和活性を測定したところ、予想したように高い中和活性を示すことが初めて示され、消化管内でも毒素原性大腸菌やコレラ菌の産生するエンドトキシンに対する中和活性が示唆され、これらの対症療法薬としても有望ではないかと考えられた。
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