研究概要 |
家畜の心拍数、呼吸数、直腸温、皮膚温などの生理諸元と、顎運動回数、顎運動休止回数、姿勢、歩数,飲水行動などの行動情報を同時記録し、放牧生態を総合的に把握するデータロガシステムを開発し、夏季暑熱時の放牧生態を調査した。 歩数あるいは歩行距離は家畜の生産性を左右する重要なパラメーターの1つである。ヒト用の万歩計(pedometer)を牛の脚に取り付け、牛の歩数を連続記録する家畜装着用のデータロガを考案し、歩行距離を推定する方法を検討した。1分間当たりの歩数総数を最長3週間連続記録できた。狭い放牧地では放牧地を区画に区分し、家畜の位置を連続してプロットして、また広い放牧地では、家畜の後を観察者が歩いて、移動距離のキャリブレーション(ロガ値1回当たりの家畜の移動距離)を行った。 飲水行動は採食量や体温維持に影響を及ぼす重要な行動である.自家製のセンサーを鼻環先端(あるいは下顎部)固定し、24時間の飲水行動を自動記録する装置を開発した。 高冷地である八ヶ岳の牧場で放牧行動の季節変化を調査したところ、食草、反芻行動の出現パターンは春、夏、秋ともほぼ同様の傾向が見られ、食草時間は3季ともほぼ等しく、反芻時間は春、秋に比べて夏季で増加した。1日当たりの移動距離は夏季に比べて、秋でやや増加した。この原因として、秋季の草量の減少が考えられた。この結果は以前報告した茨城県(平地、温暖地帯)での成績と著しく相違しており、高冷地の夏季放牧では暑熱ストレスの影響が少ないことが放牧生態から実証できた。温暖地での夏季の家畜増体低下の原因の一端が把握できた。
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