RAPD分析によるシロクローバ品種・クローンの識別法と、生存に有利な体制戦略を検討した。これらの分析技術と情報は、集約放牧システムと持続放牧システムにおける、シロクローバの共存戦略の全容解明を強力に支援する。シロクローバ2品種(大葉品種Kopuと小葉品種Tahora)を使い、RAPD法によりこれら2品種を識別できるか否か、さらにクローンを識別できるか否かを検討した。多数のプライマーをスクリーニングした結果、10種類のプライマーが有望であった。これらのプライマーの分析結果を組み合わせることにより、シロクローバ品種・クローンを高精度で識別できることが確認された。酵素多型分析を併用することで、比較的安価に識別することが可能である。集約放牧システムとしてペレニアルライグラス型草地を、持続放牧システムとしてシバ型草地をそれぞれ取り上げ、フィールド調査とミニ草地実験を組み合わせた研究を展開した。ペレニアルライグラス型草地については、さらに放牧圧を違えた要因実験を実施した。慣行放牧区と超集約放牧区において、先述のシロクローバ2品種の生存率・成長量を分析した結果、慣行放牧区の成績は大葉品種>小葉品種、集約放牧区では小葉品種>大葉品種の傾向にあった。しかし、大葉品種は可塑性が大きいため、集約放牧区で矮小化し、小葉品種に類似した体制を示した。一方、シバ型草地(草地試験場山地支場に所在)における有利なシロクローバクローンの体制を評価した。「大葉クローンがパッチ内競争に有利であり、パッチ内に大葉クローンがわずかでも含まれるなら、それが急速に成長して優占する。」という仮説をたてて検証した。その結果、この仮説はおおむね支持された。しかし、気象変動によって結果が大きく左右されることが確認された。
|