バヒアグラス(品種:ペンサコラ)の種子由来懸濁細胞から再生した植物体のうち、無作為に選んだ28個体(再生個体)および種子発芽から得た5個体(対照個体)を、平成5年10月1日(1年目)および平成6年6月29日(2年目)に刈取り、ルーメン微生物を用いた消化率を査定するとともに、NDF、リグニン、エステル結合性フェノール酸の分析とリグニン構成核およびその生合成に関わる酵素の組織化学的検出に供した。 1年目、2年目ともに、再生個体には一定の消化率の変異が認められるとともに、その可消化NDF含有率は対照個体のそれより有意に高く、従って、再生個体は消化されやすい植物細胞壁を多く含むことが判明した。これは1年目ではNDF含有率が高かったにもかかわらずその消化率が低くなかったこと、2年目ではNDF消化率そのものが高かったことによる。 再生個体における細胞壁あたりのリグニン含有率は、1年目では対照個体より低かったが、2年目では差がみられなかった。1年目、2年目ともに、再生個体におけるリグニン含有率とNDF消化率との間には有意な負の相関を認めたが、対照個体におけるそれとは様相を異にし、また1年目と2年目でも違いがあった。p-クマル酸およびフェルラ酸それぞれの含有率、両酸の合計量や比率のいずれもにおいても、再生個体と対照個体との間で差異が認めらず、一定の傾向もなかった。リグニン中のシリンギル核を検出するモイレ反応およびクロスベパン反応、グアイヤシル核を検出する酸フロログルシン反応、さらにフェノールオキシダーゼおよびパーオキシダーゼを検出する反応のいずれもにおいても、再生個体と対照個体との間で差異が認めらず、一定の傾向もなかった。
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