ニワトリにおいて中鎖トリグリセリド(MCT)が引き起こすそ嚢からの飼料飼料通過速度の遅延機構を明らかにする目的で研究を行った。まずMCTの投与経路により異なるのかどうかを調査した。その結果、MCTを経口で投与することにより遅延するが、腹腔に投与しても遅延しないことが判明した。次にこの遅延がMCTから産生された脂肪酸の影響かどうかを明らかにするために、アルカリによる緩和効果を調べた。しかしながらアルカリ処理により更に遅れることが判明した。次にドーパミン作動性神経の関与についてドーパミン受容体の拮抗薬を用いて調査したところ、その関与は少ないものと考察された。また交感神経の関与についても調べたが、交感神経を遮断すると飼料の通過が更に遅延することが判明した。迷走神経の切除手術を施し、迷走神経の関与を調べた。長鎖トリグリセリドを含む飼料の通過速度は迷走神経の切除により遅れたが、MCTによる飼料の通過速度は手術により影響を受けることはなかった。次いでどの部位の腸管神経叢が関与しているかを調べるために消化管各部位の脱神経を行った。筋胃の頭側神経網と外側結合部の脱神経によりMCTの通過速度はさらに遅延することが判明した。消化管部位よりアセチルコリンの遊離を促すシサブリドの投与やムスカリン受容体遮断薬であるアトロピンの投与でもMCTによる飼料速度の遅延は改善されず、むしろさらに遅れることが判明した。これらよりMCTによる飼料通加速度の遅延はコリン作動性神経を介していないことが明きらかとなった。また一酸化窒素の関与について一酸化窒素の自発的発生剤であるニトロフルシドナトリウム塩(SNP)を調査したところ、SMPの水準が高まるに連れて更に飼料の通過速度は遅延した。
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