本研究はルーメン藻菌のアミノ酸要求性をあきらかにして、藻菌の培養技術の向上、保育酵素やその遺伝子ならびにルーメン微生物生態系に占める役割の解析などに貢献することを最終目的としている。優占種であるNeocallimastix属菌および稀少種Caecomyces属菌を使用して、以下のような知見を得た。従来の藻菌用培地を改変し、硫酸アンモニウムのみをN源とする基礎培地を開発した。これに18種のアミノ酸を種々の組合せで等モル混合したものを添加し、藻菌の増殖促進効果の有無をしらべた。この際、増殖の指標としキチンの代わりにタンパク質を用いることにしたが、両者に高い正の相関があることを確認した。18種のアミノ酸(18AA)、10種の必須アミノ酸(10EAA)、8種の可欠アミノ酸(8NEAA)の等モル混合物を添加した場合、硫酸アンモニウムのみの基礎培地(C)と比べ、有意な生育促進がみられ、特に18AAで最も効果大であった。18AAから含硫アミノ酸を除くと明確な生育低下がみられ、この低下は無機の硫黄源の添加では回復できなかった。同様な生育抑制は18AAから芳香族アミノ酸、塩基性アミノ酸などを除いた場合にもみられたので、これらのアミノ酸に対する要求が高いものと考えられる。またリジン、メチオニン、ヒスチジンの等モル混合液の添加は18AA添加と同等の生育促進効果があった。しかしOrpinらが効果を認めたグルタミン酸、メチオニン、セリン混合液の添加では、Cより有意な生育増がみられなかった。以上がNeocallimastix属菌にみられた反応である。Caecomyces属菌でも18AAおよび8NEAAの増殖促進効果がみとめらたが、10EAAによる効果はまったくなかった。このことから、ルーメン藻菌は種属によりアミノ酸要求がことなることが示唆された。
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