研究概要 |
今年度の研究計画では、いくつかのホルモンに対する免疫組織化学的標本を隣接切片として作製することと、それら標本から画像解析装置を使って免疫反応陽性細胞の画像を2値化し、2種以上の免疫反応陽性細胞の画像合成を試みることにあったが、これらの技術的な手法の確立はほぼ達成できた。ただ当初、免疫組織化学的標本の作製に蛍光抗体法を使うつもりであったが、酵素抗体法で充分解析に必要とする標本にできることが分かり、免疫反応陽性細胞の保存性も蛍光抗体法よりはるかに良いことから酵素抗体法で標本を作製することにした。これによって、レーザースキャン顕微鏡からのデジタル画像データをフロッピ-ディスクを介して画像解析装置に移さなくても光学顕微鏡から直接画像解析装置に画像を取り込んで解析が可能になった。具体的には、ウシの下垂体においてGH,PRL,ACTHのホルモンに対する抗体によってホルモン産生細胞を同定した標本を用意することができた。現在は、TSH,LH,FSHのホルモンに対する免疫組織化学的標本を作製中である。更に加えて、ヒツジの下垂体においても、GH,PRL,ACTH,Endorphinの4種のホルモンに対する免疫反応陽性細胞を同定するための組織標本も用意できた。そしてこれら用意した標本のうち、GHとPRLに対するウシ下垂体標本で画像解析装置によって免疫反応陽性細胞の2値化画像を作製し、GH免疫反応陽性細胞とPRL免疫反応陽性細胞の2値化画像にそれぞれ異なる疑似カラーを与え、一つの画像での合成を試みた。その結果、GH免疫反応陽性細胞はPRL免疫反応陽性細胞と隣接することも多いが、PRL免疫反応陽性細胞が下垂体全体に万遍なく存在しているのに対して、GH免疫反応陽性細胞は下垂体前葉背側に多く分布し、隆起帯(Zona Tuberalis)には少ないことが分かった。今後は、標本作製の完了した他のホルモンに対しても複数免疫反応陽性細胞の同時分布解析を進めていく予定である。
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