今年度は、鶏脊髄のMarginal nucleiの細胞構築を終了し、ついで透過型電子顕微鏡による観察(この報告は次年度)と神経路に関する実験を遂行中である。 細胞構築学的研究 Marginal nuclei(MN)は脊髄の第1〜22節に分布するMinor marginal nuclei(MiN)、第23〜32、ないしは33節に分布するMajor marginalnuclei(MjN)、下位胸髄〜腰仙髄に分布するVentral marginal nuclei(VN)を区別した。MiNは各節の頭側半分の範囲に分布しており、隣接する側索との境界は明瞭であった。MiNの神経細胞は比較的大型で、多極性だが長軸を頭尾方向に持つ紡錘形を呈した。ニッスル物質は微細であった。MjNは脊髄の表層に突出した主部とそれから腹角先端にかけて分布する白質部からなっていた。MjNの分布に一致して、グリコーゲンを多量に含む膠細胞も分布していた。MjNのMiNと同様に体節的に分布するとされてきたが、実際には、主部は体節的であったが、白質部は主部を起点とした扇状に広がり、隣接する核はこの部で重なり合っていた。MjNの神経細胞はMiNよりやや小型の多極細胞で、特に方向性を持たなかった。ニッスル物質はMiNに類似していた。VNは非体節的に腹索表層を中心として分布するとされてきたが、詳細に分布を観察すると、腹根付着部を中心として分布し、体節的分布の傾向を示した。この他に、MjN間、およびMiN間の側索表層にもVN類似の細胞が散在していた。VNの神経細胞はもっとも大型で、脊髄表層に平行な面を持つ、扁平細胞であった。ニッスル物質は粗大で、他と明らかに異なっていた。 神経路についてはまだ実験例が少ないが、各神経核から発した軸索は上行、下行、および反対側のかなり広い範囲に渡って、比較的短い軸索から長い軸索まで混在していることが伺われた。これから、各脊髄節間を結ぶ働きか、多シナプス性に情報を上行性、下行性に運ぶものと推察されるが、より詳細な検討が必要である。
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