研究概要 |
ラットの黄体からは主としてプロジェステロン(P)と20α-ダイハイドロプロジェステロン(20α-DHP)が分泌されている。これらの動物では、黄体の機能的な退行はPを生物活性のない20α-DHPへ還元異化することで達成されると考えられている。しかし、家畜における20α-DHPの血中動態やその生理的意義についてはほとんど明らかにされていない。従って、本研究ではヤギの20α-DHPの生理的意義を調べるために本ステロイドホルモン濃度の妊娠中の血中動態を調べた。その結果、以下のことが判明した。 1)末梢血中P濃度は交配後増加し、妊娠10日から140日まで高かった。 2)20α-DHPの血中濃度は交配後0日から140日まで次第に増加したが、20α-DHPの血中濃度は分娩の日まで高値を維持し、それから低下しはじめた。 3)Pの20α-DHPに対する割合は分娩前2日後に減少し、1以下に低下した。 4)卵巣静脈のPおよび卵巣静脈、臍靜・動脈の20α-DHPの血中濃度は頸静脈のものよりも高かった。 5)胎盤組織濃度中におけるPの20α-DHPに対する割合は1以下であった。 これらの結果は、ヤギではPの主な産生場所は卵巣、20α-DHPの主な産生場所は卵巣と胎盤である。そして、20α-DHPが卵巣や胎盤でP産生を調節する役目をしているのかもしれないこと示唆した(Sawada et al.,Steroids,1994)。
|