研究概要 |
1研究目的:発生の進んだ哺乳動物胚割球を移植核として用いるクローニングを目指し,割球の表面構造におけるPolarity(極性化)について検討した。2研究の実施計画:Polarityは生体外成熟・受精ウシ胚および生体内受精後のウサギ胚から分離した割球をFITC結合Conavalin A染色法およびアルカリフォスファターゼ染色法により観察,これら染色法における割球の染色様式を追求し,さらに染色部位と細胞内構造との関連も検討した。3研究成果:(1)FITC結合Conavalin A染色法による染色様式:分離割球の蛍光反応は、(1)割球の狭い範囲にのみ反応が見られるもの(Polarity+),(2)割球全体に均一な反応が見られるもの(Polarity-),(3)判別困難の3種類に分類できた。生体外成熟・受精胚から得られたウシ割球では8細胞期敗までPolarity+は見られなかったが,10〜16細胞期胚では14.1%,17〜32細胞期胚では21.0%,33〜64細胞期胚では37.8%にPolarity+が観察された。Polarityは胚のコンパクションと関連するものと考えられているが,生体外成熟・受精ウシ胚では発生初期から発現することが確認された。これに対し,生体内受精のウサギ胚では8〜27細胞期胚ではPolarityは全く見られず,32細胞期胚から出現し,32〜34細胞期胚14%,49〜58細胞期胚23.4%を示し,生体外成熟・受精ウシ胚と異なることが認められた。一方,アルカリフォスファターゼ染色法では薄ピンク色の蛍光反応として検出されたが,Polarityの確認は困難であった。(2)割球細胞内構造のPolarity:細胞内構造と蛍光反応部位との関連を知ろうとして,共焦点レーザー顕微鏡によるの観察を行ったところ,割球表面のFITC Con A染色による蛍光反応部位と細胞内構造物の偏在位置が一致し,細胞内においてもPolarityの起っていることが示唆された。これらのことから,移植核の選別は可能と思われた。
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