研究概要 |
Staphylococcus hyicus P-1株を用いてshET産生のための最適培養条件を調べたところ、3×10^9CFUの本菌を2,000ml三角形フラスコ中の300mlのTY brothに接種し、毎分75回振蘯下で37℃16時間培養した場合にshET活性が最大となった。本条件により分離株を培養してshET産生能を調べたところ、滲出性表皮炎(EE)罹患豚由来株の87.5%、健康豚由来株の76.1%がshETを産生した。shET産生株の培養濾液を用いて免疫拡散法およびwestern blottingを行ったところ、shETは2つの血清型に分かれた。また、shET産生株には42kbプラスミドを保有する株がみられた。50株のプラスミド非保有(PL^-)株由来の培養濾液はPL^-株由来shETに対する抗血清とのみ反応し、プラスミド保有(PL^+)27株全ての培養濾液はPL^+株由来shETに対する抗血清と反応した。そこで、PL^-株産生shETをshETA、PL^+株産生shETをshETBと分類した。shETB産生株であるP-23株の培養濾液はニワトリひなに表皮剥脱を起こしたが、プラスミド脱落株であるP-23C1およびP-23C2株の培養濾液は何の変化も起こさなかった。S.aureus表皮剥脱毒であるETAおよびETBの産生遺伝子間で高度に保存されている塩基配列を基に合成したDNA probeはPL^-株の染色体DNA、PL^+株のプラスミドDNAとのみhybridizeした。shETA産生株とshETB産生株を接種した哺乳豚には滲出物貯留、表皮剥脱、痂皮形成というEEに特徴的な症状が見られたが、shET非産生株とプラスミド脱落株(shETB非産生株)を接種した哺乳豚ではEEの症状が認められなかった。 以上の結果より、shETAおよびshETB産生株のみがEEを引き起こすこと、shET産生株はshETA産生株、shETB産生株、両毒素産生株の3つに分類されること、shETAとshETBの産生はそれぞれ染色体とプラスミドに支配されることが示唆された。
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