研究概要 |
HMG(High Mobility Group)box domainは、転写調節に関与する新たなDNA結合蛋白のモチーフであり、現在までに、哺乳類の精巣決定を担うSryやリンパ球の分化に関与するLef-1,Tcf-1,Sox4、また酵母ではmating type遺伝子MatMc,MatA1、Ste11などを含め60種以上の遺伝子が報告されている。哺乳類の神経、免疫系や生殖細胞の分化過程においても、HMGbox遺伝子群、特にSry様のHMGbox(Sox)遺伝子の関与が示唆されている。我々は、生殖細胞系列で発現するSox9及びSox17遺伝子を単離した。この内、Sox17遺伝子は、2種類のmRNA isoformが存在し、N端側にひとつのHMG boxを有するSox17 formとalternativesplicingによりDNA結合能を持たないt-Sox17 formの2種類のcDNAが得られた。精巣におけるSox9、Sox17とt-Sox17の各々の発現様式について検討したところ、Sox9は、後期精母細胞に発現が認められ、Sox17は、精祖細胞から精母細胞、t-Sox17は、精母細胞から精子細胞に発現していることが明らかとなった。各Sox蛋白のDNA結合能を検討した結果、Sox9およびSox17は、Sryおよび他のSox蛋白と類似したDNA結合特異性を示すのに対し、t-Sox17のDNA結合能は認められなかった。以上の結果から、精子形成過程において複数のSox遺伝子群が生殖細胞系列に発現しており、さらに、減数分裂前後において、Sox17遺伝子は、alternative splicingにより機能の異なったisoformに変換されることが明らかとなった。
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