研究概要 |
炎症性病態の急性相反応期における急性相蛋白変動とサイトカインの関連を追求するため,本年度はイヌおよびウマの炎症性血清中サイトカインの検出法について検討した.これまでヒト,ラットおよびマウスで用いられている生物学的測定法のイヌの血清中サイトカイン活性検出への応用を検討し,ヒトメラノーマA375S1細胞,IL-6依存性マウスハイブリドーマMH60・BSF2細胞,およびWEHI164マウス肉腫subclone28-4細胞によりそれぞれイヌのIL-1,IL-6およびTNF様活性の検出が可能であることが判明し,その測定条件を確立した.イヌ血清IL-1様活性はリポポリサッカライドを静脈内投与して実験的にエンドトキシンショックを引き起こしたイヌで,血清IL-6様活性およびTNF様活性はエンドトキシンショック下およびテレピン油を筋肉内に投与して実験的に急性炎症を引き起こしたイヌで検出された(公表論文1).テレピン油を筋肉内投与したイヌでは,典型的な急性炎症を起こし,急性反応期にはC-反応性蛋白およびα^1-酸性糖蛋白の血清濃度は上昇し,血清アルブミン濃度は低下した.これらの値は14日目から21日目までに正常値範囲に回復した.血清IL-6様活性は処置後2時間目には劇的に上昇し,6日目まで検出された,一方IL-1およびTNF活性は有意な変動はみられなかった.以上の結果から,イヌにおいても血清中のIL-6が局所損傷に対する急性反応の制御機構の一部を担っているものと推定された(公表論文2).また,ウマについても同様に検討したところ,サイトカインの測定条件はイヌのそれとほぼ同様であった.さらに,精巣摘出手術馬およびテレピン油筋肉内投与馬の経過血清についてサイトカインと急性相蛋白の関連を検討したところ,基本的にイヌと同様であることが判明した.
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