本年度の研究から以下の実績が得られた。 1)イヌの腎臓の超音波ドプラ法による定量的腎血流計測の検討 イヌの腎血流量を無侵襲的に計測するという新しい方法を確立し、その信頼性を確かめた。すなわち、体表から超音波ドプラ法により腎動脈本幹の血流速波形を記録し、この波形から求めた平均血流速に、超音波断層法より求めた腎動脈本幹の断面積および心拍数を乗じて腎動脈血流量を算出した。この値と同時に測定した電磁血流量計(観血的手法)とを各種病態下で比べた結果、両者には著しく良好な相関のあることが明らかとなった。また、腎実質内の血管(区域、葉間および弓状動脈)についても血流計測を検討し、水腎症、血流量低下等の病態モデル犬での血流パターン、流速、血管抵抗などの変化を明らかにした。 2)イヌの肝臓の血流評価 通常の体表からの超音波検査に加え、経食道的超音波検査を用いて、肝臓の肝静脈および門脈の血流計測に最適なアプローチを探索した。その結果、両検査法とも各血管(各葉の主要分枝を含め)を明瞭に描出・同定できるアプローチが確立できた。特に、経食道アプローチでは血流測定に最適なドプラビーム角度が肝静脈、門脈とも容易に設定できたことから、本法の腹部(特に肝臓)手術時の肝血流モニターとしての応用性が示唆された。現在、肝疾患モデルを作成して、本アプローチによる血流変化の定性的・定量的検討を進めている。 3)ウシの肢端および乳房の至適血流計測の検討 アプローチ法を模索し、前者では前・後肢の肢動脈の主要枝を、後者では外腸骨動脈(経直腸的アプローチ)および乳動脈主要枝を計測可能であることが明らかとなった。現在その血流測定の意義を確かめるために疾患モデルの作成準備中である。
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