研究概要 |
1.虫体の構成蛋白の解析:各発育期虫体より蛋白を抽出し、SDS-PAGEによる分画を行った。分子量28-220kdaの範囲で25-30本の蛋白のバンドが確認された。しかしうち数本が対照の犬糸条虫のそれと共通であった。これら各抗原と人口感染ラット血清を用いてウエスタンブロットを行ったところ、分子量56および200kdaの蛋白と高率に反応した。 2.免疫学的診断法の開発:抗原には成熟虫体抽出蛋白を、血清としては人口感染ラットの経過血清および自然感染、非感染ドブネズミ血清を用い、ELISAとラッテクス凝集反応(LA)を行った。 (1)ELISA:各種予備試験の結果、蛋白濃度10ug/ml、血清希釈100倍でスクリーニングし、O.D.値0.35以上を陽性と設定した。人口感染ラットでは3週目から抗体価の上昇があり、6週目でピークに達した。 ドブネズミ血清については、溶血血清も多いことから、非特異反応があり、実用に供するのが難しいことがわかった。 (2)LA:予備試験から、ラテックス(粒子径1.053u)に感作する抗原蛋白濃度を1.78mg/mlとし、マイクロタイタ-法によった。人口感染ラット血清では1週目から経時的に抗体価の上昇が確認され、6週目にピーク(平均3,200倍)に達し、34週目までほぼ同値を持続した。ELISAとLAの間には高い相関(0.83)がみられた。 自然ドブネズミ血清638例についてLAを行ったところ、抗体価の分布が2峰性を示し、400倍以上を陽性とした。その結果、陽性例が163例あり、陽性率35.5%であった。これに対し沖縄県のドブネズミは陽性率53.3%(8/15)と高率で、抗体価も高かった。 本線虫の特異抗原の抽出に関して、なお検討を要するが、LAが広東住血線虫の血清学的診断法として有用であることが示唆された。
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