血管沈着βAPの前駆蛋白であるβAPPの由来を明らかにする目的で、4%パラフォルムアルデヒドで潅流固定されたイヌの脳に対する1) βAPP免疫染色と2) βAPPmRNA ln situハイブリダイゼーション法との二重染色の実施および血管壁構成諸細胞内でのβAPPmRNA発現とβAPPおよびβAPの局在についての観察を計画した。そのため、イヌ脳凍結材料を用いβAPPmRNA ln situハイブリダイゼーション法に必要なセンスおよびアンチセンスRNAプローブの調整を行った。その結果、 1)抗βAPPモノクローナル抗体(βAPPc末認識抗体、ベーリンガー・マンハイム山之内社)陽性所見が血管壁および一部の神経細胞体に認められた。 2) PCR法により、イヌβAPPmRNA検出のための複数(6種類)のcDNA断片が回収された。 また、βAPPの代謝機序を明らかにする目的で、抗βAPP抗体および抗βAP抗体を用い、イヌの髄膜内細血管および大脳皮質内血管を免疫電子顕微鏡学的に検索し、血管壁構成諸細胞内でのβAPPおよびβAPの局在、特に、プロテアーゼを介しβAPPの代謝に関与することがin vitro下で示唆されけているライソゾームとの関係に注目し観察した。その結果、 1)一部の髄膜内細血管および大脳皮質内血管壁平滑筋細胞細胞質にβAPPおよび抗βAP陽性所見が認められた。 2)両抗体陽性所見ともサイトゾール内に遊離して存在し、ライソゾームをはじめとする細胞内小器官との関連を示唆する所見は認められなかった。
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