研究概要 |
平成7年度も前年度に引きつづき家畜腫瘍の収集・診断が行われた.特に成果があったものとしては,小動物腫瘍では,イヌの脳腫瘍の組織学的・免疫組織化学的検討が行われ,イヌではこれまで報告されていなかった巨細胞性膠芽腫giant cell glioblastomaであることが判明した.イヌ白血病について塗末標本・凍結標本等による細胞診,酵素組織化学,免疫組織化学等の検索が行われ,その結果,本腫瘍がイヌでは非常に稀とされているT細胞性の急性リンパ球性白血病であることが明らかになった.また,大動物腫瘍に関しては,食肉衛生検査所の協力も得て,ウシの大動脈体腫瘍や神経芽細胞腫等の症例が収集され,各々細胞診,病理組織学,免疫組織化学的検索が迅速固定法などの手法を用いて行われた.これらの研究の一部についてもすでに論文としてとりまとめ、海外の学術雑誌に投稿した.以上のように,平成7年度は比較的発症が稀とされている腫瘍が小動物・大動物共に収集され,詳細な検索が行わるなど,当初の予定を鑑みると一定の研究成果が挙げられたものと考える.しかしながら,計画していた新鮮腫瘍組織の収集が多数例については出来なかった点が反省点として挙げられる.これは多くの腫瘍組織がホルマリン固定材料として搬入されることに起因し,また平成7年度は本学家畜病院に訪れた腫瘍罹患動物が比較的少なかったことも影響した.このため,平成8年度は周囲開業獣医師や食肉衛生検査所等の関係機関の協力を得て新鮮材料の収集に努める必要がある.
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