平成6-8年度家畜腫瘍の収集・診断を行った.その数は年々多くなり、1994年では383、1995年では449さらに1996年では823の生検を、また、100-500の剖検をおこなって病理学的に検索した。基本的には肉眼的に観察、生材料では塗沫標本を作成した。材料のほとんどすべて組織標本を作成して病理組織学的に診断をした。その中で特に論文にまとめた腫瘍はウシでは希な乳腺由来線維腺腫、腹腔内に播種性に転移したイヌ血管肉腫、これまでに報告のないイヌの巨細胞性膠芽腫giant cell glioblastoma、脳転移したイヌの乳腺癌等でこれらについては肉眼的に、組織学的にさらには免疫組織学化学的に検索した.腫瘍は家畜病院、開業医または一部食肉衛生検査所から入手した.多くはホルマリン固定材料であつたが、生材料では細胞塗沫標本を、一部では凍結切片による診断を実施し、細胞診断では良性と悪性の診断はそれほど困難ではなかったが、まれに由来の特定が容易ではなかったことがあった。その中でイヌとネコに見られる肥満細胞腫はそれぞれに特徴があってギムザ染色による肥満細胞顆粒のメタクロマジ-(異染性)が由来特定の目安となった。しかしながら、一部の例で細胞顆粒がはっきりせずに最後まで診断困難だった例では凍結標本で最終的に診断がついた稀な例であった。その症例は治療も困難だったが、放射線に反応した。データのさらなる蓄積が必要であると思われた。また、イヌの腫瘍細胞培養による細胞系を樹立して解析した。組み替えネコγ-インターフェロンの培養細胞の効果を調べ、培養系では効果があることがわかった。
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