研究概要 |
血小板内には多種の炎性因子が含まれ,これらは血小板が活性化されたとき細胞外に放出される。その結果,炎症・免疫担当細胞の局所浸潤や補体成分の活性化などを導く。神経成長因子が創傷モデルにおいて血中及び創傷部位に高濃度に検出されたことから,他の炎症・免疫担当細胞と同じく血小板にも作用しその機能亢進に深く関与している可能性がある。従って,血小板に関連した生体反応に及ぼす神経成長因子の影響とその意義を明らかにすることを目的に実験を実施し,以下に示す成績を得た。 (1)神経成長因子レセプターに対する単クローン抗体を用いあフローサイトメトリー法により,マスウ血小板における神経成長因子レセプターの発現を明らかにすることができた。 (2)さらに,ラットおよびイヌにおいても同様の実験を行ない,神経成長因子レセプターの存在を証明できた。 (3)マウス顎下腺より分離精製した高純度神経成長因子をマウス血小板に作用させ,形態変化をアグリゴメーター法により調べたところ,血小板の活性化を示す成果が得られた。また、光顕および電顕的形態観察の結果は,その活性化を支持するものであった。 (4)また,神経成長因子は血小板からのセロトニン放出を惹起する活性を有することが明らかとなった。 本研究成果は,神経成長因子が,血小板に対し明らかに生理活性を持ち、血小板活性化因子として機能している可能性を強く示唆するものである。これは,神経成長因子の新しい生理活性の発見を意味している。今後は,血小板への作用機序を分子レベルので解明していきたい。
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