研究概要 |
Rhodococcus equi(以下、R.equi)強毒株、弱毒株の相違に起因する病変の差異を究明するために、感染防御抗原である15-17kDa抗原を有するR.equi強毒株と同抗原を保有しない弱毒株を3系統(C57BL/6,BALB/c,C3H/He)のマウスと免疫機能に異常を持つ疾患モデルマウスに静脈内接種した。接種後、経時的に光学顕微鏡学的(免疫組織学を含む。)ならびに電子顕微鏡学的検索、細菌のクリアランス、ELISAによる血清中の抗R.equi抗体測定を行った。その結果、菌株間に認められるマウスに対する病変の差異が感染防御抗原である15-17kDa抗原に基づくということが明らかとなり(FEMS Immunology and Medical Microbiology,受理済み)、マウスによるR.equi感染実験は免疫機能に異常を持つ疾患モデルマウスを含む、いずれの系統のマウスを用いても病変の再現性が高く、結果も安定しており、マウスは感染モデルとして有用であることが判明した。免疫機能が正常な3系統のマウスと免疫機能に異常を持つ疾患モデルマウスとの病変の相違としては、強毒株感染ヌードマウスでは実験期間を通じて菌は持続的に増殖し、病変は悪化し、肝臓の巣状壊死、脾腫(最大で約20倍)が顕著となり、全身性の細菌栓塞像を呈し、死亡する例も認められる一方、免疫系の正常な3系統のマウスでは、病変は肝臓と脾臓に限局し、一過性に終息した。また。弱毒株はマウスの免疫系の如何を問わず、軽微な病変しか示さなかった。強毒株感染ヌードマウスでは対照の3系統のマウスにおいて見られた抗体応答と肉芽腫形成を主体とする感染防御は認められなかった。尚、重症複合免疫不全マウス(SCIDマウス)を用いた感染実験、免疫電顕、インターフェロン-γ等サイトカインの推移、フローサイトメトリーを利用してリンパ球のサブセットの動態については現在実験が進行中である。
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