西トルキスタンで収集した栽培キビ38系統、アワ3系統、これらに混入していたエノコログサ・ヒエ属植物各1系統、および日本ほか産キビ22系統、キビ人為交雑種75系統を比較栽培試験に供した。測定した形質は、出穂までの日数、分けつ数、出葉数、草丈、穂長、花粉稔性、種子稔性など23形質である。西トルキスタンのキビは穂型の変異が著しかったが、A直立密穂、B小型穂およびC小型疎穂と大きく3タイプに分類できた。さらに、Aタイプは低い分けつ性と茶色の穎果、Bタイプは高い分けつ性と灰色の穎果、Cタイプ(随伴擬態雑草)は高い分けつ性と種子脱粒性をもつ。日本の本州以南産の系統に比較して、西トルキスタン産のキビは著しく早生であった。疎穂の系統は早生で赤紫色の雌蕊をもち、この形質は日本の北海道在来のものと共通する。 栽培したアワのうちで、2系統は非分けつ性であったが、栽培キビに混入していた1系統は高い分けつ性と短い穂をもっていた。すなわち、後者のアワとキビのCタイプは分けつ性が高い点でより祖先穂に近いタイプと考えられる。 モロコシの脂肪酸組成の比較については、西トルキスタン産10系統のほかに、比較のためアフリカ産2系統、日本産1系統を用いた。総脂質、中性脂質、糖脂質、リン脂質、ステロールについて分析したが、産地により明瞭な差異が認められた。とりわけ、中性脂質において、主飽和脂肪酸、主不飽和脂肪酸および微量脂肪酸の間に幾組かの有意な正または負の相関が認められた。
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