研究概要 |
前年度に引き続き,野生種から現代の栽培種を含むオオムギ33品種を選択し,出穂時の止葉から上位3葉および出穂後の止葉,第1葉,芒を経時的にサンプリングし,グルタミン合成酵素の2つのアンソザイム(GS1,GS2)、リブロース-1,5-ビスフォスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco),可溶性タンパク質,クロロフィル量を定量し,品種間変異を解析した。得られた新たな知見は以下のようであった。 1.出穂時の止葉および上位展開葉の可溶性タンパク質,Rubisco,GS1,GS2量,クロロフィル量は野生種を含む大多数の品種で,下位葉ほど明らかに減少した。総GS量に占める各GSアイソザイムの割合は,野生種ではGS1が止葉から下位葉にかけて,ほとんど変化しないか,あるいは減少するのに対して,栽培種では逆に大多数の品種で増加するという特徴的な変化を示した。これらのことより,止葉から下位葉にかけてのGS1/GS2比の変動様式が野生種と栽培種を特徴づける指標の1つとなり得る可能性が高いことが強く示唆された。 2.野生種を含む大多数の品種において,芒,止葉,上位第1葉の可溶性タンパク質,Rubisco量は時間の経過と共に減少する傾向を示した。GSアイソザイム量はほとんどの栽培種において経時的に減少したが,雑草的形態の強い野生種では3週目まで増加した。 3.第1週目と第4週目の止葉と上位第1葉における可溶性タンパク質量は収量が高い品種ほど高くなる傾向を示した。また第2,3週目の止葉,第2週目の上位第1葉におけるRubisco量と収量との間には正の相関があった。これに対して、第2週目の止葉,上位第1葉におけるGS1量と収量とでは高い負の相関を示した。以上の結果,オオムギの収量と止葉,上位第1葉におけるGS1量,Rubisco量,可溶性タンパク質量とは密接に関連していることが示唆された。
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